
ナンスのホールディングアーチは、矯正治療において使用される固定式の装置で、主に上顎の大臼歯の位置を安定させ前方に動いてこないように留めておくことを目的としています。
混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)や、歯列矯正中に臼歯の位置を保持するために用いられることが多く、特に成長期の子どもの矯正治療において使用される装置です。
ナンスのホールディングスアーチを簡単に言うと奥歯が動かないようにするための装置です。
つまり、その位置でいてほしいときに使用する、つっぱり棒のような役割をする装置です。
ナンスのホールディングアーチの主な機能と目的
- 臼歯の固定と位置の保持
矯正治療では、前歯や小臼歯を後方へ移動させる際に、後方の大臼歯が前方へ引っ張られる力が働くことがあります。ナンスのホールディングアーチは、これを防ぎ、臼歯の位置を固定させる役割,大臼歯が前方へ動かないようにします。特に、抜歯矯正において前方の歯を後方へ引くとき、支点となる臼歯が動いてしまうと治療効果が損なわれるため、その抑制はとても重要です。 - スペースメンテイナーとしての役割
乳歯が早めに抜けてしまった場合、その伱間に隣接する歯が移動してしまうことがあります。このような場合、ナンスのホールディングアーチはスペースメンテイナーとして用いられ、永久歯が萌出するまでそのスペースを保持します。特に上顎の小臼歯が生えてくるまでの間、大臼歯が前方に倒れこむのを防ぐのに有効です。
(*スペースメンテイナーとは抜けた乳歯のスペースを保持し、永久歯の正しい位置への萌出を促す装置のことです。) - 伵合の安定化とアーチ形態の保持
矯正治療では、歯列全体の形状を保ちながら歯の移動を行う必要があります。ナンスのホールディングアーチは、歯列アーチ(歯が並んでいる弓状の構造)の形態を維持し、特定の歯が不必要に動くことを防止します。

装置の構造
ナンスのホールディングアーチは以下の3つの構成から成り立っています。
- バンド:上顎の左右の第一大臼歯に取り付ける金属製のリング。
- アーチワイヤー:左右のバンドにつなぐ弓状の金属ワイヤー。
- アクリルパッド:アーチワイヤーの中央部に付属する、上あごに当たるパーツ。これが装置の「ホールディング(保持)」機能を高める。
この装置は基本的に固定式であり、患者様自身が取り外すことはできません。
装着後は、数か月から1年以上そのまま使用することがあります。
具体的には、乳歯が抜けて永久歯が生え揃うまでが使用期間です。
使用上の注意点
ナンスのホールディングアーチは非常に安定性の高い装置ですが、使用にあたって以下の点に注意しましょう。
- 口腔衛生の徹底
アクリルパッドが上あごに接しているため、食べ物が詰まりやすくなります。また、歯磨きがやりにくくなるため、歯肉炎や虫歯になりやすくなります。今まで以上に歯ブラシや補助的な清掃器具を使って丁寧な歯磨きが必要です。場合によっては保護者の仕上げ磨きが必要でしょう。 - 食事制限
粘着性のある食品(キャラメル、ガムなど)や硬い食品(ナッツ類)は装置が壊れたり、脱離の原因になるため、なるべく控えるようにしましょう。 - 違和感や発音への影響
装着当初は、アクリルパッドが舌の動きを妨げることで違和感を覚えることがあり、一時的に喋りにくくなります。また、食べ物が飲み込みづらくなることもあります。しかし、多くの場合は1~2週間で慣れてきますし、痛みはほぼありません。
たくさんおしゃべりして慣れましょう。

まとめ
ナンスのホールディングアーチは、矯正治療を成功させるために重要な役割を担う矯正装置です。
臼歯の位置の固定、スペースの保持、歯列アーチの安定化などの目的で使用されます。
特に成長期の子どもに対しては、歯列の健全な発育を促進するうえで有効な矯正装置です。
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