歯列矯正に興味はあるけれど、「本当に歯はきれいに並ぶの?」「治療期間はどれくらい?」「抜歯が必要になるの?」と、不安や疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
近年、矯正治療の選択肢は大きく広がり、ワイヤー矯正やマウスピース矯正など多彩な方法が登場していますが、これらの治療の精度と効率をさらに高めるカギとなるのが「アンカースクリュー」という装置です。
「矯正=長い・痛い・抜歯」というイメージを変えてくれる存在として、矯正専門医の間でも非常に注目されています。
今回は、「アンカースクリュー」について、詳しくご紹介していきます。


👆 アンカースクリューによる矯正治療経過途中


👆 前歯が後ろに引っ込み、出っ歯が解消されてきている。
歯列矯正と聞くと、多くの人が「ワイヤー」や「マウスピース」などを思い浮かべると思いますが、実は矯正治療の成功に大きく関わってくる装置の一つに「アンカースクリュー」があります。
「アンカースクリューって何?」「怖くないの?」「本当に必要なの?」という疑問をお持ちの方に向けて、アンカースクリューの基本から、実際の使い方、メリット・デメリット、注意点まで、丁寧に解説していきます。
目次
1.アンカースクリューとは

アンカースクリュー(英語ではTemporary Anchorage Device(TAD))とはチタン製の小さな医療用ネジ(スクリュー)で軽い、強い、錆びにくいと言った特徴を持ち、歯を動かす際の土台「固定源(アンカー)」として顎の骨に一時的に埋め込む装置で効果的に歯を動かしていきます。
チタンは生体適合性に優れた金属で骨折の接合や人工関節、人工歯根などに用いれられ金属アレルギーの心配もなく安全な装置です。
2.アンカースクリューの種類

埋入する場所、用途によりアンカースクリューの太さが変わります。
・1.4mm:頰側に装着。バネ(コイルスプリング)やゴム(パワーチェーン)で引っ張る。
・1.6mm:上顎臼歯に装着。バネ(コイルスプリング)やゴム(パワーチェーン)で引っ張る。
・2.0mm:口蓋側に装着。スライダーなどの装置をつける。
2.痛みはあるの?手術は怖くない?
歯ぐきにネジを埋め込むと聞くと痛そうな処置ですが痛みの心配はありません。
始めに局所麻酔をします。
麻酔の量も少量で処置も数分で完了し、抜歯よりは体の負担も少なくすみます。
施術後は軽い痛みや違和感が出る事がありますが数日で治ります。
3.アンカースクリューの取り外しはどうするの?
治療が進み、アンカースクリューの役割が終わったら、簡単に取り外すことができます。
こちらも局所麻酔をして外します。
外した後の穴は自然に塞がっていき、特に傷跡が残ることもありませんのでご安心ください。
4.アンカースクリューはどんなときに使うの?

以下のようなケースでよく使われます。
・前歯を大きく引っ込めたいとき
口元が出ている(いわゆる「出っ歯」)場合、前歯を後ろにしっかり引っ込めたいと考える人が多いでしょう。アンカースクリューを使うと、奥歯を動かさずに前歯だけを効率的に後退させることができます。
・奥歯を前に動かしたいとき
反対に、奥歯を前に動かしたい場合(例えば抜歯後のスペースを詰めるときなど)にも、しっかりとした固定が必要になります。こうした場合にもアンカースクリューが役立ちます。
・上下の歯のバランスを整えるとき
例えば、上の歯だけが出ているようなケースでは、上の歯を後ろに下げる必要があります。そのようなときも、アンカースクリューを使うことで、狙った部分だけを動かすことができます。
5.アンカースクリューのメリット
・動かしたくない歯を守る
従来の矯正では、歯を動かすために他の歯を支えとして使うため、本来動かしたくない歯までズレてしまうことがありました。アンカースクリューは骨に直接固定されるため、強い支点となり、不要な力が他の歯にかからず、狙った歯だけを効率よく動かすことができます。結果として、歯列全体のバランスを保ちながら、より正確で安定した矯正治療が可能になります。歯への負担が少ないのも大きな利点です。
・歯の動きの幅が広がる
奥歯の引き込みや、前歯の大きな後退、垂直的な歯の移動(圧下など)など、従来難しかった動きも対処可能にします。
・治療期間の短縮
効果的な力のコントロールにより、矯正装置を装着して歯を動かし歯並びを整える期間の短縮に繋がる可能性があります。
・外科手術の回避
出っ歯や開伵など、以前は外科的手術を必要としていたケースでも、アンカースクリューを使用することで手術を避けられる場合があります。
6.アンカースクリューのデメリット

1.脱落や、ゆるみが生じることがある
脱落した場合は違う部分へ埋入することがあります。
2.感染の原因となる場合がある
アンカースクリューの頭は口の中に出ています。しっかりしたケアを行わないと骨感染を起こす可能性があります。
3.歯根を傷つける可能性がある
歯の根と根の間に埋入することが多いため埋入時に傷つけてしまう可能性があります。
7.治療の流れ(手順)

1. カウンセリング・診断
レントゲンで骨の厚さや位置を確認し、アンカースクリューの位置を決めます。
2. スクリュー埋入の準備
通常、局所麻酔(歯の部分麻酔)を行います。衛生的な環境で行われ、痛みはほぼありません。
3 .スクリューを埋め込む
骨に直接スクリューをねじ込みます。時間は片側で5分ほどで、出血もほとんどありません。痛み止めも処方するのでご安心ください。
4 .アンカースクリューに装置を付ける
ゴムやバネで力をかける→アンカースクリューを支点として、歯を引っ張ったり、移動させます。
必要に応じて力の調整を行いながら、定期的に通院し経過を確認します。
5. 力の調整と経過観察
治療期間中は月1回程度の調整が必要です。アンカースクリューや矯正装置の状態、歯の動きなどを歯科医がチェックし、必要に応じて微調整を行います。
6 .スクリューの除去(治療後)
目的を果たしたら、スクリューは簡単に取り外します。局所麻酔を行い、数分で処置完了となります。
傷口は自然に治癒し、痕はほとんど残りません。除去後も、後戻りを防ぐため保定装置の装着が必要になることがあります。
7.注意点
・口腔内の清掃
アンカースクリュー周囲に汚れがたまると、炎症(周囲炎)を起こすことがあります。通常の歯磨きやワンタフトなどを用い、歯科医の指導に従って丁寧な清掃が必要です。
8.まとめ

すべての矯正患者がアンカースクリューを使えるわけではありません。
顎の骨の厚みや質、全身状態(糖尿病、骨粗鬆症など)、口腔衛生状態によっては適さないこともあります。
担当医がCTやX線写真などを用いて慎重に評価し、使用可否を判断します。
アンカースクリューは、矯正歯科治療の精度と自由度を飛躍的に高める画期的な装置です。
これにより、従来の矯正法では困難だった歯の移動や伵合の改善が可能となり、患者にとっても大きなメリットがあります。
一方で、適切な使用と十分な口腔ケアが求められるため、歯科医との密な連携が重要です。
「口元を引っ込めたい…」
「抜歯をせずに矯正できる方法を探している…」
そんな方は、ぜひ一度、アンカースクリューを取り入れた治療が可能かどうか、歯科医院で相談してみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
このブログが、矯正治療を考えている方の不安や疑問を少しでも軽くできれば嬉しいです。
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