成長を利用して治す方法があります。
その1つがバイオネーター(OC1)です。
今回はOCー1(バイオネーター1)という矯正装置についてお話しましょう。
目次
はじめに:歯並びとあごの成長

日本人の出っ歯の原因は下顎が後退しているパターンが多いとされています。
したがって出っ歯を治すために、矯正治療には「歯だけ」ではなく、「あごの骨の成長」にアプローチする方法が有効な場合があります。その代表的な装置のひとつがOC−1 バイオネーター(Bionator) です。
子どもの成長期 に使われることが多い矯正装置で、あごの成長をコントロールしたり、口の周りの筋肉のバランスを整えたりすることで、自然な形で歯並びやかみ合わせを改善していく特徴があります。
OC−1(バイオネーター)の基本構造

OC−1(バイオネーター1)は、取り外しができる矯正装置(可撤式装置)です。見た目は大きめのマウスピースのようで、プラスチック部分とワイヤー部分でできています。
主な構造は以下のとおりです。
- プラスチックの本体
上あごと下あごの間に入る形で作られており、下の歯列の位置を適切に誘導します。 - ワイヤーの部分
歯に軽く接触することで、歯が動く方向をコントロールします。 - ねじやバネ(場合による)
必要に応じて歯列の幅を広げたり、特定の歯の位置を補助的に動かしたりすることもできます。
この装置を口の中に入れると、下のあごが少し前方や特定の位置に誘導され、成長に合わせて骨格のバランスを改善していくことができるのです。
OC−1(バイオネーター1)の特徴
バイオネーターにはいくつか種類があり、その中で 「OC−1(バイオネーター1)」 はもっとも基本的なタイプです。
OC−1(バイオネーター1)は、特に 下あごが後ろに引っ込んでいる子ども(下顎後退) に効果を発揮します。
主な目的
- 下あごの成長を前方に誘導する
- 上下のかみ合わせを整える
- 歯列の幅をバランスよく整える
- 口呼吸を鼻呼吸に改善する助けになることもある
つまり、歯を「無理やり動かす」のではなく、 子どもの自然な成長力を利用して歯並びや骨格を正しい方向へ導く のが大きな特徴です。
どんな子に向いているの?

OC−1(バイオネーター1)がよく使われるのは、以下のようなケースです。
- 成長期の子ども
主に小学校中学年~中学生くらいまでの成長期に使うと効果的です。成長が止まった大人には、OC−1(バイオネーター1)だけで十分な効果を得ることは難しいことが多いです。 - 出っ歯(上顎前突)
上の前歯が大きく前に出ている場合、原因のひとつが「下あごの成長不足」です。OC−1(バイオネーター1)は下あごを前に誘導するため、出っ歯の改善につながります。 - 水平的なかみ合わせのズレ
上あごと下あごの左右ズレも、修正可能です。
使い方
OC−1(バイオネーター1)は取り外しができる装置なので、使い方と装着時間がとても大切です。
マウスピースのような装置をお口のなかに入れて、上下の歯にはめこむようなかたちになります。下あごを少し前に出したまま、正しい位置でキープします。
- 基本は1日12~14時間以上装着
学校に行く時間は外していても、帰宅後から寝ている間はしっかり装着する必要があります。ただ、可能であれば学校に行く時にも使用することで、長時間効果が得られます。 - 食事のときは外す
食べ物が装置に詰まってしまうため、食事中は外しましょう。
OC−1(バイオネーター1)のメリット
- 自然な成長を利用できる
無理な力ではなく、体の成長と筋肉の働きを活かすため、体にやさしい方法です。 - 取り外しができる
食事や歯みがきのときに外せるので、口の中を清潔に保ちやすいです。 - あごの骨格改善につながる
単に歯を並べるのではなく、将来の顔立ちや横顔のバランス改善にも効果が期待できます。 - 口呼吸の改善
装置を入れることで下あごや舌の位置が変わり、鼻呼吸が促されることがあります。
デメリット・注意点

もちろん万能ではなく、注意すべき点もあります。
- 装着時間を守らないと効果が出ない
自分で取り外せる装置なので、装着時間が少ないとほとんど効果がありません。 - 効果が出るのは成長期に限られる
成長が止まった大人には基本的に向きません。 - 見た目や咬み合わせに慣れるまで時間がかかる
初めは装置が大きく感じてしゃべりにくかったり、下あごを前に出して固定するため違和感が強かったりします。しかし、使い続けることで慣れてきます。 - 適応できない症例もある
骨格のズレが大きい場合や、成長方向が望ましくない場合には、他の矯正方法が必要になります。
- 食べられない、話しにくい時に、外す必要がある
主に「下あごを前に誘導して、正しい位置に成長を促す」ための取り外し式の矯正装置です。お口の中いっぱいに入る大きめの装置なので、食事や会話のとき、使ったままだと不便が生じます。 - 装置を外したらケースに入れる 失くしたり壊したりしないようにケースに入れるようにしましょう。
- お手入れについて
毎日使うものなので、清潔にしておきましょう。使ったあとは、やわらかい歯ブラシでやさしくこすって水で洗い流しましょう。歯磨き粉には研磨剤が含まれている事が多いため使わないようにしましょう。
治療の流れ

1. 診断
レントゲンや模型などを使って、あごの位置や成長の予測を立てます。
2. 装置の製作
歯型をとって、患者さんに合った装置を作ります。
3 .装着開始
装置を渡され、使い方や装着時間について指導を受けます。
4. 定期チェック
1~2ヶ月ごとに歯科医院で調整や経過観察をします。
5. 成長に合わせて終了
下あごの位置が改善したら装置を卒業し、その後は仕上げの矯正(ワイヤーやマウスピース)につなげることもあります。
保護者が気をつけること

バイオネーター1は「ただ入れていれば勝手に治る装置」ではありません。
実際に効果を出すためには、お子さんと保護者が一緒に取り組むことが大切です。
1. 装着時間を守る工夫
効果を出すには、1日12~14時間以上の装着が必要です。夜寝るときだけでは足りないため、
- 宿題をしている時間
- テレビや読書をしている時間
など、家で過ごすときにもつけさせるのがポイントです。
保護者が時計を見ながら声かけをしてあげると、子どもも習慣にしやすくなります。
2. ほめてモチベーションを上げる
最初は違和感が強く「しゃべれない」「つけると痛い」と嫌がる子も多いです。
そんなときに叱るよりも、「昨日はよく頑張ったね!」「今日はもう少し長くつけられたね!」と小さな達成をほめてあげることが成功への近道です。
3. 食事と清掃のサポート
食事のときは外してますが、その後は歯磨きをしてから再び装着します。
使い終わった装置は水洗いし、週に1~2回程度、専用の洗浄剤で清潔に保ちましょう。子ども任せにせず、保護者がチェックしてあげるのが安心です。
4. 定期通院を忘れない
きちんと使われていますか?壊れたり、変形が無いかどうかの確認が必要となります。
乳歯のぐらつきや永久歯の萌出に伴う調整も必要です。
FAQ(よくある質問)

Q1. バイオネーター1は何歳から使えますか?
A. おおむね小学校低~中学年(7~12歳)の成長期が適しています。
Q2. 装着時間はどのくらい必要ですか?
A.1日12~14時間が目安です。夜だけでは足りず、日中も必要です。
Q3. 装置をつけるとしゃべりにくくなりますか?
A. はい、お話しする時は基本装置をはずすことになります。
Q4. バイオネーター1だけで治療は終わりますか?
A. 下顎の前方成長促進が目的なので成長期に効果を発揮しますが、個々の歯の位置のコントロールができないため、多くの場合その後に本格矯正が必要になることがあります。
Q5. 大人でも使えますか?
A. いいえ、成長を利用する装置なので大人には適応しません。
まとめ

OC−1(バイオネーター1)は、成長期の子どもに使われる矯正装置のひとつで、特に下あごの成長不足による出っ歯の改善に大きな効果を発揮します。
「歯を動かす」のではなく、「あごの成長を助ける」ことを目的としているため、体にやさしく、自然なかたちでかみ合わせや顔のバランスを整えていくことができます。
ただし、効果を出すには「装着時間を守ること」が何より大切です。取り外しができる自由さがある反面、本人とご家族の協力が欠かせない治療法でもあります。毎日、コツコツ使い続けることが大事です。
子どもの将来の笑顔や健康的なかみ合わせをつくるために、OC−1(バイオネーター1)はとても有効な選択肢のひとつといえます。






