「歯がデコボコしていて気になる」「歯並びのせいで、うまく咬みにくい」と感じていても、成人になってからの矯正治療に不安を感じる方は少なくありません。
今回ご紹介するのは、26歳女性・叢生(そうせい)の矯正治療症例です。
叢生とは、歯がきれいに並ぶためのスペースが不足することで、歯が重なったり、デコボコしたりしている状態を指します。
本症例では、スライダーを使用して奥歯を後方へ移動させた後、頬側ブラケット装置による永久歯列全体の矯正治療を行いました。
初診時の状態から診断、治療計画、治療経過、治療前後の変化までをご紹介します。
症例概要
※治療期間や通院回数、治療結果には個人差があります。

| 項目 | 内容 |
| 初診年齢 | 26歳 |
| 性別 | 女性 |
| 主訴 | 歯がデコボコしている・咬みにくい |
| 診断名 | 叢生 |
| 治療方法 | スライダーによる臼歯後方移動後、頬側ブラケット装置による矯正治療 |
| 治療部位 | 上下顎永久歯列全体 |
| 抜歯有無 | あり |
| 抜歯部位 | 上顎左右第三大臼歯・上顎左右第一小臼歯・下顎右第二小臼歯・下顎左第一小臼歯 |
| 動的治療期間 | 3年 |
| 保定治療期間 | 2年 |
| 治療回数(動的時) | 38回(トラブルによる通院を含む) |
| 使用装置 | 上下表側マルチブラケット装置、アンカースクリュー |
| リスク・副作用 | 歯の移動に伴う痛み、上下顎前歯部の歯根吸収、装置による口内炎、ブラッシング不良によるむし歯・歯周炎 |
| 費用 | ¥1,251,800(税込) |
初診時の状態
初診時は、患者さんから「歯がデコボコしている」「咬みにくい」というご相談がありました。
確認したところ、上下の歯列に歯が並ぶスペースが不足することで歯の重なりがみられました。
歯並びのデコボコは見た目だけでなく、歯ブラシが届きにくく、清掃が難しくなる場合があります。将来的にむし歯や歯周病のリスクも高まりやすいです。
上下の歯の咬み合わせや歯の位置を確認しながら治療方針を検討しました。
診断内容
検査結果をもとに、上下顎永久歯列全体の歯並びと咬み合わせを確認し、叢生と診断しました。
歯を並べるためにはスペースの確保が必要と判断し、奥歯の位置を調整する方法と、抜歯を組み合わせた治療計画を立てました。
抜歯部位は、上顎左右第三大臼歯、上顎左右第一小臼歯、下顎右第二小臼歯、下顎左第一小臼歯です。
Q. 叢生の矯正では必ず抜歯が必要ですか?
叢生(歯がデコボコに並んでいる状態)の矯正治療でも、必ず抜歯が必要になるわけではありません。 治療に必要なスペースがどの程度か、現在の歯の位置や傾き、咬み合わせ、顎の大きさなどを確認したうえで、治療方法を検討します。
スペースを確保する方法には、歯を抜く方法だけでなく、歯列を広げたり、奥歯を後方へ移動させたりする方法などがあります。ただし、どの方法が適しているかは一人ひとり異なります。
そのため、まずは検査・診断を行い、歯やお口の状態に合わせて、抜歯の必要性を含めた治療計画を検討することが大切です。
治療計画
まずアンカースクリュー、スライダーを使用して臼歯を後方へ移動させ、歯を並べるためのスペースを確保する計画としました。
その後マルチブラケット装置によって上下の歯を少しずつ移動させ、歯並びと咬み合わせを整えていきました。
矯正治療では、歯を一度に大きく動かすのではなく、状態を確認しながら段階的に調整していくことが一般的です。
Q. スライダーってなに?
スライダーとは、矯正治療で歯を動かすために使用する装置です。 主に、奥歯を後ろへ移動させることで、歯を並べるためのスペースをつくる目的などで使用されます。
歯並びの状態によっては、歯を抜かずにスペースを確保する方法のひとつとして検討される場合があります。 ただし、すべての方に適しているわけではなく、歯の位置や咬み合わせ、骨格などによって適応が異なります。
使用する場合には、検査・診断を行ったうえで、治療の目的や方法、治療期間、注意点などをご説明します。 詳しいスライダーについては当院ブログ“2025.07.01 見えない場所で歯を動かす「ベネスライダー」ってなに?”をご参照ください。
治療経過
治療開始後は、スライダーによる臼歯の後方移動を行い、その後、頬側ブラケット装置による治療へ移行しました。
治療中は定期的に歯の動きや咬み合わせを確認しながら、装置の調整を行いました。
また、装置のトラブルなどにより追加の通院が必要となったこともあり、最終的な通院回数は38回でした。
動的治療期間は約3年です。
矯正装置を装着している期間は、歯の移動に伴う痛みや違和感、装置が頬や唇に触れることによる口内炎などが生じる場合があります。
動的治療開始時
スライダー装着

装置装着1年後
4本抜歯・上下顎頬側マルチブラケット装

装置装着1年4ヶ月後
右下犬歯ブラケット装着・下顎左右第二大臼歯ブラケット装着

装置装着1年11ヶ月後
スペースが閉じるようにループワイヤー装着


装置装着2年5ヶ月後
スペース閉鎖

装置装着3年後
ブラケット装置撤去→保定期間へ

治療前後の比較



治療前には、上下の歯列にデコボコや歯の重なりがみられました。
治療後は、歯列のデコボコが整い、上下の歯並びと咬み合わせが改善されました。
ただし、矯正治療の変化や治療結果は、歯の状態、骨格、年齢、治療への協力度などによって異なります。
また、治療後も歯は元の位置へ戻ろうとする傾向があるため、保定装置を使用して歯並びを安定させることが重要になります。
担当医コメント
この患者さんは、上顎に非常に重度の叢生(歯のでこぼこ)があり、さらに口元を後退させたいとの希望があり、通常の小臼歯抜歯だけでは対応できないことから、上顎の大臼歯を一旦後方へ移動させたうえで、さらに小臼歯抜歯を行った症例です。
予定通り両側の上顎大臼歯をスライダーを用いて移動させて、そのままスライダーを固定源として利用し、犬歯を含めた前歯の後方移動に利用できました。エステティックラインで評価すると理想的な側貌となり、口元の緊張もなくなったので非常に良かったと思います。
よくある質問
Q. 矯正治療には痛みがありますか?
矯正治療では、歯を動かすことで痛みや締め付けられるような違和感を感じる場合があります。特に、マルチブラケット装置の調整後などは、一時的に歯が浮いたように感じたり、かんだときに痛みを感じたりすることがあります。
また、スライダーなどの補助装置を使用する場合も、装置による圧迫感や違和感を感じることがあります。
装置がお口の内側に触れることで、頬や唇などに擦れや傷ができたり、口内炎が生じたりする場合もあります。
痛みや違和感の感じ方には個人差があります。気になる症状が続く場合や強い痛みがある場合は、無理に我慢せずご相談ください。
まとめ
今回は、26歳女性の叢生に対する矯正治療症例をご紹介しました。
歯のデコボコや咬みにくさが気になっていても、必要な治療方法は歯並びや咬み合わせによって異なります。
本症例では、スライダー、アンカースクリュー、マルチブラケット装置を使用し、抜歯を組み合わせながら約3年間の動的治療を行いました。
「大人になってから矯正できるの?」「抜歯が必要なの?」など、矯正治療について疑問や不安がある方は、まず現在の歯並びや咬み合わせについてお気軽にご相談ください。
ごとう歯科・矯正歯科クリニックでは、一人ひとりの歯並びや口腔内の状態を確認したうえで、治療方法をご提案しています。
※本症例は治療結果を保証するものではありません。治療期間・通院回数・治療方法・治療結果には個人差があります。
こちらのブログではこれからも、矯正治療や歯科治療に関する情報を発信していきますので、皆様のお口の健康に少しでも役立てていただけますと幸いです。
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